茹だるような暑さ。
蝉が延々と同じリズムを刻み続ける。
街から人通りが消えるのも無理はない。
まったく見知った顔のない街中。
犬が狂ったように吠え続ける。
静か過ぎる。
すれ違う人々は汗ひとつかいていない。
街路樹が一本もないこの道。
雑木林にいるような、蝉の大群の合奏が鳴きやまない。
なにかがおかしい。
まるで異次元に迷い込んだような錯覚。
否、ここに今存在する自分こそが錯覚なのだろうか。
……狂ってる。
迷い込んだら二度と元には戻らない、そんな狂いだ。
足元がおぼつかない。
アスファルトに食い込む感触。
なにか柔らかい有機物を踏みつけているようだ。
さらに持ち上げる足はまるでヘドロから抜き出すかのようだ。
思わず足を取られる。
後ろに手をついて倒れこむ。
手がべたつく。
赤い。
……これは臓物か。
ああ、なんだ。
自分は今、これまでに殺した人の、
腐乱した屍骸の上を歩いているのか。
あれほど耳障りだった蝉の音はなくなり、
景色自体が変わっていた。
自分がどうやら周りに不幸を振りまく存在だということに、
小学校の5年のときにしてようやく気がついたんだ。
ソファーに沈み込み、俯く男は告白した。
それは人を変えてしまうような、そんな狂いだった。
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