頑張れば頑張るほど目的を見失うんだろう
頑張れば頑張るほど目の前のものに必死になる
頑張れば頑張るほど目的から逸れる
頑張れば頑張るほどそのズレは広がる
頑張れば頑張るほど苦悩を忘れられる
頑張れば頑張るほどその後の反動が大きくなる
頑張れば頑張るほど恐怖は肥大する
頑張れば頑張るほど意識が遠のく
頑張れば頑張るほど追い込まれる
頑張れば頑張るほど退路はなくなる
頑張れば頑張るほど圧迫される
頑張れば頑張るほど押し出される
そうして崖にぶら下がる彼は
その手に何かを掴むために
岩の亀裂から手を放した
真夜中2時にふと眼を覚ます。
掛け時計と置時計のズレたタイミングがビートを刻む。
たまにこういう事があるわけだが、
やることと言えば「考える」ぐらいしかないわけで。
どんなことを考えてみても、
結局はいつも同じところへ行き着く。
同じところを徘徊し続け、
いつもとは違う観点に立つ。
あの頃僕にはハッキリと見えていた。
あの頃貴方には見ることがかなわなかった世界。
そして今。
あの頃見えていたものは霞んでしまった。
今は貴方がそれを目にしているのだろう。
開いているKOOLに手を伸ばし、
月明かりに反射するZIPPOをまさぐる。
チャキーン。
心地良い音。
部屋の中に明かりがひとつ灯る。
呼吸に調和し、瞬く小さなオレンジ。
煙をくゆらせ考えることを中断する。
暗い部屋の中で煙なんか見えないの同様に、
さっきまで考えていたことは忽ち何処かへ消えていく。
きっと月の綺麗ないい夜だ。
茹だるような暑さ。
蝉が延々と同じリズムを刻み続ける。
街から人通りが消えるのも無理はない。
まったく見知った顔のない街中。
犬が狂ったように吠え続ける。
静か過ぎる。
すれ違う人々は汗ひとつかいていない。
街路樹が一本もないこの道。
雑木林にいるような、蝉の大群の合奏が鳴きやまない。
なにかがおかしい。
まるで異次元に迷い込んだような錯覚。
否、ここに今存在する自分こそが錯覚なのだろうか。
……狂ってる。
迷い込んだら二度と元には戻らない、そんな狂いだ。
足元がおぼつかない。
アスファルトに食い込む感触。
なにか柔らかい有機物を踏みつけているようだ。
さらに持ち上げる足はまるでヘドロから抜き出すかのようだ。
思わず足を取られる。
後ろに手をついて倒れこむ。
手がべたつく。
赤い。
……これは臓物か。
ああ、なんだ。
自分は今、これまでに殺した人の、
腐乱した屍骸の上を歩いているのか。
あれほど耳障りだった蝉の音はなくなり、
景色自体が変わっていた。
自分がどうやら周りに不幸を振りまく存在だということに、
小学校の5年のときにしてようやく気がついたんだ。
ソファーに沈み込み、俯く男は告白した。
それは人を変えてしまうような、そんな狂いだった。
過去は過去で恐れるべきものじゃない。
清算が済んでなくても、
フラグが未回収であろうとも。
反省して直視せよ。
そう書かれた紙飛行機は頭上を通過して、
あさっての方向へ飛んでいった。
悪夢でもない。
望みのものが確実に手に入る夢でもあるのだから。
肺気腫で6ヶ月の命だと宣告される夢。
言われてみれば、むせてばかりいるし、咳が止まらない。
欲しいものは不平等で、
避けたいものだけが平等にある。
そんなマーフィーの法則は嘘で、
平等に訪れる死が欲しい。
不平等な命なんていらない。
一番ほしかったものは手に入らなかったけれど、
笑顔でうけとれるものが手に入ればそれで。
死ぬ前にせめてこれだけは言いたかったこと。
周りの人みんなに。
いつだって。
いつだって決して本気で人の趣味を、
馬鹿にしたり批判したりはしてこなかった。
鼻でわらったりも。
その人が好きなものなら。
もちろんただ、「この人はこういうのが好きなんだ」っていう。
自分からそれを受け入れて、
好きになれるものは一握りだったかもしれないけど。
でも、それでもそれを批判はしてこなかった。
単に僕なりに好きなろうと努力してる、
天邪鬼なそんな僕だからきっとその姿は真逆に見えたんだろう。
もし、その様に勘違いされてきたのなら。
このまま逝くのはひどく心外だけど。
結局逝くものの言葉はなんてものは、
排水溝に吸い込まれる、たった一本の髪のようなものでしかないけれど。
もしこの世界に何か残していってしまっていたとしたら。
大地に苔生やすことすらできない一粒の涙でも残していってしまったら。
そのなかにもこんな言葉で救われる一時の哀しみがあったのなら。
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